ガスパン遊びに依存性はある?
1960年代後半以降、学生たちの間ではアンパンと呼ばれる遊びが流行っていました。
そのアンパンとは、シンナーやトルエンをビニール袋などに入れて、気化したシンナーを吸うというものです。
アンパンをすると、酔っぱらったような状態になり快感を得られるのですが、続けていると副作用(頭痛・嘔吐・筋肉の劣化・骨や生殖器の障害・幻覚など)が起こります。
そのため、1990年代に毒物及び劇物取締法が強化され、シンナーやトルエンの売買が規制されました。
それに伴いアンパンの乱用者は激減しました。
しかし、それと引き替えに、ガスパンと呼ばれる遊びが台頭してきました。ガスパンとは、アンパンの「アン」を「ガス」に変えたものです。
そのガスは、ライター・ガスボンベ・制汗スプレー・パソコンクリーナーなど様々です。
そのガスを吸うと、脳が酸欠状態になります。
すると、酩酊(めいてい)状態になり、頭がボウっとするのですが、それを楽しむのがガスパンです。
ガスそのものには、シンナーや覚醒剤のような依存性は無いとされています。
しかし、ガスパンをすることによって、脳が酸欠状態になる遊びをするという行為に依存するようになり、精神依存やコントロール喪失に陥ることは珍しいことではありません。
そのため、ガスには依存性はありませんが、ガスパンの乱用は「ガス依存症」になる可能性があります。
従いまして、ガスパンは依存性があると言えます。 世界保健機構では、依存症について診断基準を設けていて、下記のように定義しています。
① 脅迫的に使用する。それが無いといられない。
② 量や時間において、計画していたよりも多く使用してしまう。
③ 以前より多くの量を使用しないと効かない。
④ 切れると、不安・イライラ・意欲低下など禁断症状(離脱症状)が出る。
⑤ 生活・仕事・人間関係などよりも優先して使用する。
⑥ 有害な事があると分かっているのに使用する。
①~⑥のうち、3つ以上満たしている場合、依存症とされています。
なお、ガスパンを乱用することによる障害(後遺症)は、下記のようなことが考えられます。
① 思考力低下
② 意識障害
③ 喉頭浮腫(こうとうふしゅ)
④ 喘息(ぜんそく)
⑤ 意識喪失
⑥ 多臓器不全 などなど…
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ガスパン遊びは違法?
シンナーを吸った(アンパン)場合、毒物及び劇物取締法によって逮捕されます。
しかし、ガスパンを取り締まる法律はありません。
そのため、ガスパンをしても逮捕されることはありません。だからといって、ガスパンをしても良いとは言えません。
ガスパンによる死亡事故も起きていますし、ガスパンがきっかけになり、他の依存性薬物に手を出すことも非常に多いため、法律で規制されていなくても、決してやるべきことではありません。
そのような背景があるため、啓蒙活動も行われていますし、未成年者へのライター充填用ガスボンベの販売は自粛されています。
これは、未成年者にタバコを吸わせないという意味もありますが…。
ガスパンをやめさせるには…
現在は、ネットで様々な情報を簡単に得ることができますから、中学生でもガスパン遊びのやり方を知ることは難しいことではありません。
そのため、1人でガスパンをしている中学生もいますが、中学生の場合、ガスパン仲間がいることは珍しいことではありません。
ただ、ガスパン仲間と付き合いを続けながら、ガスパンをやめることは非常に難しいといえます。
それは、仲間と離れると孤立してしまう怖さがあるからです。
しかし、ガスパンをやめさせるためには、ガスパン仲間と離れさせる必要があります。
一緒にいては、必ずガスパンをしてしまいますから…。
従いまして、ガスパン仲間から距離を置かせて、ガスパンをやめるように指導しないといけないのですが、頭ごなしに「ガスパンをやめろ」「ガスパン仲間と遊ぶな」と言っても、反発されるのがオチです。
そのため、親や教師は焦らずに、ガスパンをしている子供に接することが大切です。 まず、判断や批判をせずに、話しを聞くことが重要です。 ガスパンをしている本人も、ガスパンが良くないことは分かっています。
ガスパンをしている子供の気持ち
・このまま続けているとヤバイことになるかも知れない
・完全に意識を失ってしまったので怖さは感じている
・やめた方がいいだろうとは思っている
・やめようと思ったが、またやってしまった
ガスパンをしている子供のほとんどは、上記のようなことを思いながらも続けてしまっているものです。
話し合いをして、ガスパン遊びをしていることを話してくれたなら、まずは正直に話してくれたことを褒めてあげることが大切です。
仮りに、渋々話したとしても、話してくれたことを褒めてあげて、本人が言うことに批判などはせず、本人の問題意識や、ガスパンをやめようとした経験があるかを確認します。
例えば、「やめようと思っているけど、ついガスを買ってしまった」「やめようと思っていたけど、友達に誘われて断れなかった」など、本人としては「やめよう」としている気持ちを話してくれるかも知れません。
そのように、少しでも本人がやめようと努力している部分が見えたなら、それを評価してあげることは、とても大切なことです。
何故なら、正直になることが、ガスパン遊びをやめるための第一歩だからです。
ただ、親だけで抱え込まないことも大切です。 中学校の先生などにも協力を仰ぎ、みんなで支援していくことで、子供も相談できる相手を見つけることができ、改善につながっていきます。
しかし、親や先生だけでは、なかなか上手くいかない場合は、専門機関に頼ることが必要になります。
専門家に相談することを子供に伝えるとき、子供が納得しやすいように、言葉の使い方に配慮することは大切です。
例えば、「オマエの考えてることはオカシイ」「オマエはヤク中だから…」「もうお手上げだから…」などと、本人を否定するような言い方をすると、反発したくなる気持ちが沸き起こってきて当然です。
そのため…、
・依存症という病気になっているのではないかと心配している
・以前とは、様子が違っているので気になっている
などと懸念していることを伝えて、客観的にガス吸引のことを話し合うきっかけをつかむことが必要です。
そして、「悩んでいたり、困っていたりしているなら、一緒に専門家に相談してみよう」と提案するようにします。
ちなみに、薬物依存症を治療する専門の病院では、概ね下記のようなことをして、治療を行っています。
① ガスの乱用をやめる支援
② 薬物乱用全般に関する情報提供
③ 薬物乱用をやめた後に起こる課題の検討
④ 同じ薬物依存症患者の体験談を聞かせる
⑤ 薬物依存症患者のリハビリ施設の斡旋
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